農のオーベルジュ 白金の森

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初めてのタマゴで手にしたお金は、生涯の宝に

第三話・創業から半年

幼い頃、産みたてのタマゴの温もりに感動し、さまざまな失敗を重ねた上での一念発起。養鶏場をはじめたお話を、これまで書かせていただきました。今回は、少し遡って、最初にタマゴが売れたときのお話をさせていただきます。


苦労が多い分、感動も大きいものです。周囲から、「卵の値段は上がる見込みがないからやめとけ」と忠告されても、決めた以上は思いを曲げませんでした。案の定、昭和44(1969)年に養鶏業のスタートを切ってからは、ど素人の私は、壁に直面してばかりです。


半年後……。
我が子のように可愛がったニワトリが、はじめてタマゴを産んでくれた時は、本当に嬉しかった。当時、毎日のように様子をうかがいに来てくれていた近所の後藤トミエさんと小躍りして喜びました。

「タマゴを分けてくれないかい」と、トミエさん。
 
「どうぞどうぞ。まだ小さいけど」と、
私は、10個ほどを新聞に包み差し出しました。

すると、「一生懸命育てた卵を無料でもらうわけにはいかん」と
百円札を手渡そうとするのです。もちろん、これまでお世話になったトミエさんからお金をいただくわけにはいきません。
そうやって、何度も押し問答をしていると…


「これは、あなたの人生の宝物にしてほしい」と、
トミエさんがおっしゃるのです。この言葉がずしんと心に響きました。

自分で事業を興して、はじめて手にした記念すべきお金です。
「この百円札を、『生涯の宝』にしよう」
そう思いました。
 

トミエさんさんからいただいた百円札。


トミエさんが帰ってもまだ、心は感動と喜びでいっぱいでした。
「この気持ちを文書に綴ろう」。
書き終わると、心がとても落ち着いたのです。
「ああ、幸せとはこんな瞬間をいうのかもしれないな…」
今でも、当時のことは鮮明に覚えています。



その便せんと百円札は、神棚に大切に納め、
半世紀経った今でも、毎朝、手を合わせています。


次回のブログは……
「松岡三兄弟で経営をはじめた」お話です。
 
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